在庫の適正化(在庫削減や販売機会損失防止)が経営課題

1990年代後半に盛んに取り組まれていたSCM(サプライチェーンマネジメント)というキーワードが最近ではあまり聞かれなくなりました。しかし、業種によって違いはあるが、SCMの目的である、「市場・顧客と製造などの供給元との連鎖活動であるチェーン上での調達・供給のスピードアップを図る」、「販売機会損失防止や不良在庫削減という、在庫の適正化を実現し、キャッシュフロー効率を向上させる」というテーマは、あらゆる企業において継続的な課題であることには変わりありません。

在庫の適正化を実現するためには、実際の需要数量計画された数量の差異を限りなく最小にする経営改善策が必要になります。

需要予測システムの活用は、在庫の適性化を短期で実現するための、優れた経営改善ツールです。

「売れる見込み」が判る、「必要な在庫量が判る」

需要予測システムを使用すると「売れる見込み」が判るということが最大のメリットです。
その「売れる見込み」の情報は、最小予測値、中心期待値、最大予測値という情報になります。
最大予測値が「必要な在庫量」ということになります。

需要予測システムは、過去の実績情報を分析し、高度な予測統計手法により、傾向や周期性、季節性、ノイズを分析して特性平均線を導き出します。特性平均線はスムージングとも呼ばれます。この特性平均線の延長が、中心期待値となります。

中心期待値が需要予測値となりますが、需要予測値は当たりません。
当たらないにために準備するのが安全在庫となります。


特性平均線と実績とのバラツキを分析することにより、安全在庫量を予測することになります。
最大予測値と中心期待値の差が安全在庫と呼ばれる数値です。
需要予測の精度と安全在庫の数値には相関があります。

サンプルデータを使用して説明します。
下図は、過去36ヶ月の月次時系列データの事例です。
過去36ヶ月の実績データを使用して、翌月以降の需要予測を考えてみます。

需要予測データ例(予測前)

需要予測システムを使用しない場合

過去36ヶ月の時系列データの基本統計値を計算してみます。
     ・平均値、1,549 
     ・最長値、1,000
     ・中央値、1,546
     ・最大値、2,064
     ・標準偏差、263
     ・変動係数、17%

一般的に、翌月の需要予測値は、
     ・平均値が、1,549 
     ・安全在庫、263 (1標準偏差の安全在庫とした場合)
     ・必要在庫数、1,812
となります。

標準偏差とは

標準偏差とは、バラツキを見える化したものです。
標準偏差という用語を最初に用いたのは、ピアソンで1894年のことだということです。
統計学者や天文学者のいうな昔の賢人が人生をかけて、バラツキの見える化を標準偏差という理論を開発しました。

標準偏差とは、それぞれの値が平均からどの程度離れているかを平均化したものです。

安全在庫と標準偏差

1×標準偏差の安全在庫とは、平均に対して、バラツキの平均値の安全在庫という意味です。

需要予測システムを使用した場合

下図は、過去36ヶ月の実績データを使用して、12ヶ月の予測を行なった事例です。 
(安全在庫は、1×標準偏差の安全在庫が必要として予測しています。)

需要予測データ例

上図のグラフの、青色の破線が特性平均線(スムージング)です。特性平均線が実績に近いほど予測精度が高くなります、
特性平均線と実績の差が分析され、安全在庫を含んだ予測上限値が計算されます。

需要予測システムで計算した事例、(1標準偏差の安全在庫で計算)
     ・予測最小値、1,205 (上図の上の青色のグラフ線)
     ・中心期待値、1,285 (上図の緑色のグラフ線)
     ・予測最大値、1,364 (安全在庫、79)(上図の下の青色のグラフ線)

需要予測システムを使用しない場合と比べると、必要在庫数が少なくなることにより、滞留在庫数が減少し、448 の在庫削減が図れることになります。

適正在庫の実現

需要予測システムの活用により、直近の必要な在庫量が判ります。
この在庫量の予測に従って、製造や仕入などの調達を実施することにより、結果的に販売後の適正在庫が実現されます。

需要予測システムの活用は、短期に経営改善が行えるソリューションといえます。